企業変革のジレンマ 「構造的無能化」はなぜ起きるのか
著者名: 宇田川元一 (著)
評価: ★★★★★
こんな人におすすめ
経営層、経営企画の方
特に
- 会社のステージが変わり、大企業病じゃないけどなんかもやもやしてきた
- 好調な時こそ引き締めたい
- PMI(Post Marger Integration)に取り組みたい
- 長期経営計画を考え中
みたいなタイミングでぜひ。
感想文
目から鱗だった。
今回の感想はちょっとネタバレが入る。
私に限らずコンサルタントとして関わるプロジェクトは、9割9分比較的短期間での成果が求められるものだろう。
構造改革とか、ERP導入とかいっても、長くても中計の期間、あるいはその一部のステージでの変化を期待される。
ベンチャーに転身してからは、むしろもっと急流になったかもしれない。「今を生きる」感覚が強い。筆者の言うところの「事業再生」や「V字回復」のような話に加えて、危機対応といったところだ。
”変革”とはそういうものばかりじゃない、と筆者は説く。
もっともやもやっとした停滞感。走っているんだが、進んでいないような。
一番イメージわいたのは「大企業病」みたいな感覚だ。
間違いなく「大企業病」との戦いを意識していたが、なるほど、そこに方法論はなかった。
もう一つ挙げるならPMIか。この本は特にそれに言及されているわけではないが、同様ではないか。
およそ企業活動において最上級に難しいPMI。これすら大半の教科書にあるのは、短期的成果だ。やれ90日計画だとか、管理会計の設計だとか、そんなことばかりではないか。
もちろん重要だけど、生まれも育ちも違う二社の融合が3年程度で終わるはずもない。そこに真正面から説く方法論はなかったのではないかと思う。
なかなか報われない取り組みで、派手さもない。
だから短期的なものと同時並行で取り組むのがよいのだろう。
方法論としての完成度は決して高くないとも思った。言葉も難しいワードが多い。
ただ、この視点での「変革」の重要性を理解している人にとっては参考になるものがたくさんあると思う。報われない戦いに光を当てて、そして何かヒントを得て、長い戦いを楽しみたい。