売上の地図
著者名: 池田 紀行
評価: ★★★★★
こんな人におすすめ
- すべてのマーケッターや販売責任者の方
『世界はマーケティングでできている』と同様に、売れるメカニズムの基本でありフレームワークを示していて多くの方に参考になる本と思った。
そしてマーケッター、販売責任者の全員に当てはまると思うが、とりわけ「費用対効果」に悩まされている時には、沼にはまっていく前に読むとよいのではないだろうか。
感想文
マーケティング費用のROI。その検証は<沼>である。
うすうす不可能と思いつつ、今日もどこかで誰かが挑んでいるだろう。
広告代理店やメディアによるありきたりの露出効果のレポートをもって良しとすれば、売上相関性にいつか疑義が唱えられ、金食い虫の誹りを逃れられない時が来るかもしれない。
それよりは創意工夫を凝らし、確からしいKPIを定めたほうが建設的であり、未来があると思う。
しかし、それはそれでワカランチーが湧いて出てくるのは必至だ。
困ったことに、実際に売上への因果関係を証明することは困難(な事象が発生すること)で、 いつしか合意を取ったはずの効果検証ロジックに疑いをもたれ、、、元に戻るか、深みにはまる。
デジタル広告はなまじ数字が見える化されるのでシビアになりがち。
それ自体は悪いことではない。 しかし、ふと販管費を俯瞰してみれば、はるかに効果不透明な営業人件費があったり、ブランディングの名のもとに鶴の一声で決まるマス広告があるかもしれない。
実にバランスが悪い。
と、デジタル広告中心に生業としてきたものにはひがみ半分、力不足のくやしさ半分、思うことは多い。
で、本書は決してマーケティングROI検証のための本ではない。
みんなうすうすわかっている暗黙の常識。にもかかわらず目を背けてきた事実。これを可視化しようという意欲作だと思う。
すなわち「様々な施策や外的要因が絡み合って売上につながっている」。
そんなことわかっている? わかっていないか、わかっていても見て見ぬふりをしているから、単独の施策のROIを、売上相関性を求めて今日も沼に落ちていっているとしか思えない。
まずは、売上へのメカニズムにちゃんと向き合おう。話はそれからだ、ということに強く賛同したい。少なくとも、各施策の責任部署同士のセクショナリズム、不毛な責任のなすりつけ合いはなくなるんじゃないかと期待する。