マーケティング/事業開発 経営

成長を生み出し続ける企業の10年変革シナリオ 時間軸のトランスフォーメーション戦略

10年変革シナリオ 時間軸のトランスフォーメーション戦略

著者名: 杉田 浩章 (著)  

評価: ★★★★★

こんな人におすすめ

  • 明日を生き残るスタートアップフェーズを終え一息ついたタイミングのベンチャー企業経営層の方

  • 大企業で中期経営計画を立案するタイミングの方。とくに「長期」経営ビジョンを踏まえることを意識している方。

    総じて100年後も生き抜き、成長し続ける企業経営に興味のある方。
    それをバックオフィスを中心とした仕組みやVMM等で表している本は多いが、本著はそうではなく事業そのもの、事業開発の側面から語っている意欲的な本である。

感想文

面白かった。
上記「おすすめ」の続きだが、事業開発を単発のものではなく、企業経営に必要不可欠な機能として語っている。
昔IBMでもまとめていたはずだが、書籍はなかったか。見当たらないなぁ。そちらはより”方法論”的な内容だったと記憶している。

逆に、企業経営を、永続的な組織づくりという観点でまとめている本は多数ある。本ブログでも多数取り上げているし、今後も取り上げる。本著でも一部重要な要素は触れられている。
しかし従来の書籍では、事業そのものは所与のものとして論じられていることが多い。本来、事業そのものをどう生むかが重要なのだが。

この両面、事業開発の見方、企業経営の見方の両面で新たな視点となっており、本著は稀有で興味深い。

製薬業界は事業開発と中期・長期経営とが1セットとなっている。
ある1成分の開発が数千億のビジネスを創出する。と同時にその成分の事業的寿命は生まれながらに決まっている。特許切れとなりジェネリック医薬品が登場すれば急速に売上は消滅していくからだ。
その平均寿命は、成分開発にかかる期間と近い。7~10年といったところか。それゆえ、10年単位で事業開発をし続けることが製薬業界の100年経営そのものとなる。
事業開発ではない、事業開発「し続ける」ことである。

製薬業界はしかしいま次のチャレンジにさしかかっている。
デジタル治療薬が生まれ、遺伝子治療が生まれ、再生治療が生まれ、、、つまり10年後に「治療薬」という従来ドメイン自体が変わる可能性があるのだ。

翻って、どこの企業においても、事業にはライフサイクルがあり、事業開発には長い期間が必要である。そして製薬業界以上に、次の10年後のドメインは変化する前提で考えなくてはいけない業界が多いだろう。

ではどうやって事業開発「し続ける」のか。種まきし、育て、収穫していく、「畑づくり」をしていけばいいのか。

核心に迫るその手法は、よく聞くものもあって、一つ一つが斬新なわけではない。まだまだブラッシュアップができそうな気もする。
しかし問題の視点や、まとめ方が新しく、目から鱗だった。

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