ロープライスエブリデイ
著者名: サム ウォルトン (著), ジョン ヒューイ (著)
評価: ★★★★★
こんな人におすすめ
- マネジメント、特にベンチャー企業の経営層の皆様 自伝であり、経営書であり、マーケティングの本でもあるが、優れたピープルマネジメントの本でもあると感じる。
- チェーン展開を志向している事業の皆様 内容は小売業のものが多いのでしょうが、他業種でもとても参考になりそう。ファッションであれ、なんなら金融であれ、多店舗展開を図るならば。 「仕組み化」になんか疲れてしまっている方は特に。
- 特に脈絡はないのだが、私の中で『ビジョナリーカンパニー』、『会社という迷宮』、『ロープライスエブリデイ』は三部作。会社経営のためにやるべきことがじわじわと伝わってくる。
感想文
『ザ・プロフィット』の登場人物「チャオ」先生からのおすすめ本ということで購入。チャオ先生のおすすめ本はだいぶ読んで、正直理解不能なものも多いが、これは最高でした。
無知からくる思い込みは恐ろしいもので、ウォルマートのことも、EDLP(エブリデイロープライス ※この書籍名とは逆の単語の並びのほうが浸透している)のことも、まったくもって勘違いしていた。
ウォルマートほど機械化が進み、システマティックに経営されている小売業はないと思っていた。いやそれでいうと日本のコンビニのほうが勝るか。ただ、ウォルマートのあの規模の店舗、従業員数、店舗数を規律をまもって動かして規模の経済を獲得する。どれだけシステマティックなのかと思っていた。
全然違った。もちろん、小売業として世界一IT投資しているとは思うが、それが根幹ではなさそうだ。あくまでツールに過ぎない。
EDLPは販促戦略の一つと思っていた。
キャンペーン的に値下げを行うことで顧客が慣れてしまい、キャンペーン期間以外売れなくなってしまう。それをを避けるのがEDLP戦略、みたいな。(さすがにこれは不勉強すぎるのかな)
全然違った。 これは経営哲学そのものだったのかー。
会社のミッションと言ったり、昨今流行りのパーパスと言ったりする。
しかしその前に、創業者の夢があって生き様がある。誰か人が起業するのだから、その人の夢があっての会社であり、順番は逆にはならない。
その夢や生き様に共感し、自分事化し、守破離して実践する人が、会社を未来に繋いでいく。 純粋にいいなぁと思った。
ミッションは万人受けする言語になりがちで、共感はしても、心が震えることはない。人の夢や生き様、人生史には心が震える。
勝手に自分的3部作にしてしまった『ビジョナリーカンパニー』、『会社という迷宮』、そして『ロープライスエブリデイ』だが、それぞれの視点で日本発グローバル企業に言及されているのは面白い(『会社という迷宮』は日本の本だから当たり前だけど)。
特にこの本では、日本企業に対する個人的な想いに触れられている。自動車戦争で日本にやられた悔しさも垣間見られる。
日本企業に対するリスペクトもあり、またいかにもアメリカン(これまた無知ゆえの思い込みだろうが)な国粋主義的なところもある。それもまた健全だし、よいなと思ってしまう。
日本企業の創業家の方の自伝も読んでみよう。