失敗の本質 日本軍の組織論的研究
著者名: 戸部 良一, 寺本 義也, 鎌田 伸一, 杉之尾 孝生, 村井 友秀, 野中 郁次郎
評価: ★★★★
こんな人におすすめ
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組織改革、風土改革に取り組みたいと考えているリーダーの皆様へ。
歴史に学ぶことが好きな人は特に。
(「孫子」に学ぼうとしてやや失敗したが、こちらはよかったです)前半は、戦史を紐解いて解説している内容。後半がそこからの示唆を整理している内容となっている。
ただ、前半の内容について、戦闘における布陣や戦闘力や兵站といった内容を文字で理解するのはキツい。
著者陣の苦労をすっ飛ばして理解したつもりになるのは気が引けるが、ぶっちゃけ後半だけ読むのでも十分価値がある。続編もあるのでそちらも読みたい。
感想文
『知識創造企業』の野中郁二郎先生も著書の一人の一冊。テイストも主テーマも全然違うけど、どちらも名著。
読みやすい本ではないが、何十年たっても色あせない着眼点と学びがある。
以下ネタバレ含むが、グサッと刺さる指摘がいくつもある。
・あいまいな指示
・(集団に流れる)空気
・失敗を認めることの恐れ
・情緒的な人事
・責任を取らないトップ
・大本営という意思決定機関風の調整特化機関
話は組織論から教育論にまで及ぶ。すなわち答え、唯一解や記憶を求める教育。
書籍タイトル「本質」に恥じない追求ぶりである。
個人、タレントで負けているわけではない。残念ながら「異端」とされてしまうが、傑物は存在している。名もない異端・異能はもっといたのだろう。
リーダー不在はところどころ嘆かれているところだが、個人的にはそれも違う気がする。 リーダーの素養ある人、自力ある人も含めて、個人で負けているわけではないのではないかと。
時に異端のスペシャリスト、あるいはリーダーたるジェネラリスト。その起用や、活躍の場づくりも組織課題である。そういう組織的な敗因があるという整理にしっくりくる。
第二次世界大戦時の時の「失敗の本質」が、何十年経った今もなお色あせないこと。 しかも自分自身の企業経営においても、コンサルタントとして見てきた数多くの企業様においても、はたまた昨今の政治・官僚の世界にも当てはまると感じる。
これだけ歴史と、適応範囲が多ければ、もう悪しき伝統を超えて、日本人の弱みと思ったほうがいいのではないか。 ちょっとでも気が緩めば、また同じ轍を踏むということである。
そう自覚して望まないといけないと思った次第。