HARD THINGS
著者名: ベン ホロウィッツ, 訳:滑川海彦他
評価: ★★★★
こんな人におすすめ
- いわゆる大企業からベンチャーやスタートアップへの転身を考えている方
- あるいは大企業勤めで、ベンチャーやスタートアップとの取引を考えている方
- 新規事業責任者にも任命された方にもいいかも
- 企業小説やプロジェクトXが好きな方
感想文
ハードな、企業や事業の存亡がかかる出来事というのを何度も経験させていただいた。
いや、この本ほどハードでは、「前門の虎後門の狼」状態よりはマシだったかもしれないが、確実に「虎」と遭遇した。
自分の場合は鈍感力と楽天家気質で切り抜けた気がする。そういう意味では著者ほど真剣に虎と向き合えていたかと自分に問いかけたくはなる。
トップオブトップの創業者CEOの感覚になれてもいなかったのかもしれない。
いずれにせよHARD THINGSはベンチャーあるあるだ。どのスタートアップ、ベンチャーにも日々起こっている出来事。
本当に冗談みたいなことが起こる。なのでこの本を読んで冗談だと思わないほうがいい。そして(この本に限らず、いくつかあると思うので)読んでから転職したほうがいい。
「冗談と思わずに」というところがポイント。小説のように他人事で読んでも意味がない。
そのうえで覚悟を持って、覚悟というのは悲壮感じゃなくて楽しもうという境地だが、足を踏み入れたらよいんじゃないかな。
ハードシングスと同じくらい、ハッピーチャンスもあるということも忘れてはならない。実際あった。
もう一つ、 大企業の人とか、官公庁の人には、こういう会社を相手にしていることを少しでもわかってほしいですね。
大企業にとっては大したことない取引でも、こちらは社運がかかっている。大義名分を振りかざした政策転換・制度変更で、一つの起業家が夢をつぶされる。逆に特需に沸いたりする。
わかってもらったところで何かが変わるもんでもないか。意味ないかな。せめて「業者」などという差別用語にも似た表現を軽々しく使われることが減ったらいいなぁ。
最後に読書感想文的なところでいうと、前半の生々しいエピソードは迫力満点でした。
後半のなんていうか理論・理屈編は、うーん、あんまり刺さらなかった。失礼。
著者が序文を書いている名著「High Output Management」が経営管理の工業化を感じさせる内容だとすると、もう一方の経営の要素であろう「アート」の魅力なのかな、と思った。